依存かもしれない。
でも、私とお父さんは、それくらいの絆が無かったら、生きて来れなかったから。
「〜?何処だい?」
縁側に寝転がって昼寝をしていると、何処からかお父さんが私を探す声がする。
ここだよー、と返事をしたいけど、眠気に勝てる私ではなかった。
瞼を開けようにも、重いし。
あー、無理。と、そうそうに諦めてしまった。
でも、この春の陽だまりの中で、まどろむなという方が酷だろう。
元々寝不足の私だ。
この状況は願っても無いことで、断る理由も無い。
目の上に、腕を乗せ、もう一度睡眠の闇へと体を委ねた。
心地よい暖かさに意識はすぐに邸の中から消えた。
「あ、ねぇ。知らないかな?」
「様ですか?」
「うん。さっきから探してるんだけど・・・・」
「ふふふ・・・」
「?」
「すいません、様なら、この時間帯はお昼寝されてますよ」
「何処で?」
「縁側です。景時様がお洗濯をされるお庭の」
私は、すごく有名なお父さんに、普通のお母さんの間に生まれた。
発明好きのお父さんが、いつもお母さんに怒られて、でも懲りずにまたやって。
ちょっと騒がしい家だったけど、すごく幸せだった。
この幸せが、ずっと続くと思ってた。
「、お母さんはね、もう居ないんだ」
幼い私はその言葉の意味をよく理解出来なかった。
でも、今なら分かる。
お母さんは死んだんじゃない。
出て行ったんだ。
私に分からないようにだけれど、二人の仲は早々に冷めていたらしい。
私には関係ないから、ひたすら隠していたそうだ。
だから、仮面夫婦はそこそこ続いていた。
お母さんが出て行ったのは、結局私が6歳の時だったから。
「お母さん?」
「あぁ、。どうかした?」
「泣いてるの?」
「ぇ・・・・」
「泣かないで、がお側にいてあげるから」
子どもというのは凄いと思う。
実際その時お母さんは泣いてなど居なかった。
でも、私のその言葉がきっかけのように、私を抱きしめ、声をあげずに、嗚咽だけで大泣きした。
私はよしよしとお母さんの背中を撫でていたような記憶がある。
「お父さん、お母さんおそいね・・・・」
「・・・・・」
「大丈夫かな?、しんぱいだよ・・・・・」
「っ・・・・・・・・、こっち向いてくれるかな?」
「なに?」
「、お母さんはね――――」
「・・・・・・・・・・・・・・・・・・あー、夢か・・・」
あの時の夢を見るなんて、いつぶりだろう。
最近まったく見ていなかったのに。
何かの暗示のようで、少し怖い。
空を見て見ると、まだ太陽は高い位置にある。
もう一眠りしようとした時、腰に回された腕が見えた。
・・・・・・・・・・腕?
しかも、その腕はよく知っている人の腕に似ていた。
触って見ると、そっくりだ。
程よく筋肉のついた、決して筋肉質じゃない腕。
所々に戦の時の傷跡が残ってる。
でも、肌は何の手入れもしていないのに、綺麗だ。
その人の気質を表しているようだ。
昔、その優しさのせいで、とても苦しい思いをしたとか。
叔母さんや、弁慶さんに九郎さんたちから聞いたことがある。
全部を背負って、一人で傷ついて、本当にこいつは馬鹿だよって。
娘の前で、馬鹿って本音を言える、そんな大切な人が居るっていいねって前、そういったことがあった。
そうしたら、その人は笑顔で「そうだね」って応えてくれた。
優しく、私を抱きしめてくれてる腕をそっと撫でる。
私はいつまでこの人の側に居ることになるんだろうか。
分からない。
寧ろ、分からない方が幸せだと思う。
「お父さん?」
「・・・・・・・・・」
呼んでも規則正しい寝息しか返ってこない。
どうしようか。
このまま寝てもいいんだけど、さすがに床ずれしそう。
寝返りも打てない状況。
ごそごそと動いて、何とか体を反対方向に向けることが出来た。
ふぅと一息付いて、顔を上げると、お父さんの寝顔があった。
もうすぐ四十路なのに、この人の寝顔は子どもみたいだ。
最初に見た時から年をちゃんと取っているのかという疑惑さえ持ってしまう。
形式的な年は取るのに、体にその衰えはまったく見えない。
後で、ずどーんと来るのだろうか。
そうなったら、私はお父さんを見捨てようと思う。
「おとーさーん」
「・・・・・・・」
どうして起きないの?
私と同じように寝不足だったの?
そんなに仕事溜めるからだよ。
いつも叔母さんに言われてるでしょ?
お父さんの頬に指を這わす。
すぅと頬から顎に落ちてしまう。
「・・・・・・・・私がお嫁に行く日、お父さんどうするんだろう」
そんなことを不意に思った。
私は再び襲ってきた眠気に意識を預け、もう一度眠った。
父の胸に頬を寄せて。
暖める腕程無邪気 なものは
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本編。主人公17歳。景時38歳。
ゲーム時は景時27歳で、主人公6歳。別れた後なので、景時一人身。
ゲーム自体のストーリーに何の支障もありません。