黒い部分をどうやって隠そうか。
君に知られまいと、どうやって偽ろうか。
隠すことに慣れすぎて、偽ることに慣れすぎて。
もういっそ 壊して しまおうか。
「っ、かげ・・・・とき・・・・?」
どうしてだろう。
どうして、恐ろしく思うんだろう?
いつもの景時なのに、いつもと同じ笑顔なのに。
どうして、こんなにも怖い?
「どうしたの、?」
「どう、したのって・・・・景時こそ、どうしたの・・・・?」
「オレ?オレはどうもしてないけど」
「・・・・・・・・・・うそ・・・・」
「?本当にどうしたの?」
へらへら笑う、彼は彼なのに。
何かが決定的に違う。
それは、私だから確信出来るんだろうか?あぁ、だったらなんという傲慢なんだろうか。
私の頭に手を乗せ、そのまま優しく撫でる景時。
いつもと同じ動作、声色、笑顔、香り、空気、感触、温度、距離、雰囲気、光景。
同じでしょ?
なのに、どうして違うと私は感じるの?
その全てが、嘘だと分かってしまっているの?
気付けば、景時の手を払っていた。
景時の手を払った、私の手は思いのほか痛かった。
見てみると、若干赤くなっている。
「痛いなぁ」
その声に弾かれるように景時へ視線を移した。
そこには、私によって払われた手を撫でて、眉を八の字にしている景時がいた。
いや、初めから景時はそこにいるんだけど・・・・
景時が手を撫でているだけなのに、よく発明中に怪我とかして、よくするのに。
怖い。怖い。怖い。怖い。怖い。怖い。怖い。怖い。怖い。
背筋に風が走ったのが分かる。
悪寒なんてもんじゃない。
もっともっともっともっと!、何か、怖いものだ。
「、本当にどうしちゃったの?」
「わ、たしは、どうもしてないよ。景時だよ」
「オレ?さっきも言ったけど、オレがどうしたの?」
「どうして・・・・・そんなに今日怖いの・・・・・?」
きょとんとした景時の顔。
でも、見逃せなかった。
目が、光を失ったのを。
光がない代わりに、そこには紅く、蠢くものが見えた。
それが何なのか、私には分からないけど、よくないものだということくらいは分かる。
私が動けずにいると、景時が近付いて腕を掴む。
「ひっ」
「ってさ、どうしてそう聡いの?」
「さ、聡い・・・?」
「そう。どうして、オレが隠してることに気付いちゃうの?」
「か、かげと―――」
「 壊す しかなくなっちゃうじゃないか」
景時は、その時、本当に笑っていた。