良い天気だ。



グラフィックの世界の天気に良いも悪いもあるのかと言われればそれまでなのだが。


とりあえず、良い天気だ。




ここはいつ来ても良い天気だ。


ロストグラウンドと呼ばれているここは。







高く聳え立つ壁。



その向こう側には一体何があるのか。


誰も知りえない。


もちろん、製作者も。




彼らにしてみれば、向こう側なんて存在しないのだから。


だが、一部のプレイヤーはそんな製作者の意思とは関係なく想像する。



そして、その想像は想像を遺脱する。








"創造"となるのだ。
















モーリー・バロウ城壁。

















ここは彼女のお気に入りの場所の一つだ。


彼女はいつも城壁の一番上の縁に腰掛け、眺める。



グラフィックで形成されている景色を、そこから眺めるのが好きだ。





本来手を伸ばせば見えぬ壁がある。


それはゲームの世界の端だといえるだろう。




だが彼女は知っていた。





それが端ではないことに。





それより向こうに行くことは可能である。
























「ん?やぁ、八蛇」





耳元で自分を呼ぶ声に答える。


どうやらチャットのようだ。


八蛇と呼ばれた男の声は続ける。























「そこは行動範囲外だ。どけ」


「酷いなぁ・・・ここが好きなの、八蛇知っているくせに」


「一般プレイヤーに影響が出ぬようにだ」


「こんなところに居るプレイヤーに気付くやつ、居ないよ」


「だが、掲示板にお前のことであろう書き込みがあるぞ」


「え?マジ?」


「都市伝説的な書き込みだったがな」


「あちゃー。気を付けてたんだけどな・・・・今度からはもっと気を付けよ」


「気を付ける以前にそういう行動をやめろ」


「やだよー。好きなことやめる事ほど嫌なことはないのに」



・・・・・」





「あ、ショートメール来た。じゃね、八蛇」



「おいっ話はまだ・・・・」











八蛇が何か言いかけていたが、は無視を決めてその場で転送装置を起動させた。







向かうはマク・アヌ。



理由は、仲間。

















#01 i am here