が一人、縁側に座り、夏から秋へと向いゆく自然を見つめていた。

夏の、緑が美しい季節も、もうじき色付き一段と美しい季節へと、移ろう。

ひぐらしも、鳴くのをそろそろ終えそうだ。

蝉の抜け殻が、物悲しさを際立たせている。

は、ぽつんとそんな中、座っていた。




様」


「?銀?」


声のした方を向くと、見知った銀色と優しい紫が見えた。

ゆっくりと歩を進め、近付いてくる。



「どうかなさいましたか?」


「?別に、何とも無いよ」


「そうですか」



そのまま、の隣へと腰掛けた。

不思議に思いながらも、別に咎める事でも、言い寄ることでもない。

は銀と共に自然を見つめた。

風が涼しく、まだ一応夏なのにな、と思う。

この時間帯になると、風は気の早いことでもう秋だった。

月が辺りを照らしているから、そんなに暗くない。

今日は晴天だったから。



「こんな時間に、どうされたのです?いつもならば、お休みされているはずですが」


「・・・・あぁ、だから、"どうしたの"、か」



不意に銀が問う。

その問いで、先ほどの銀の言葉の意味を理解した。

まだ真夜中ではないにしろ、いつもならばはこの時間既に寝ている。

それが今日は起きており、まして縁側に座っていた。

銀なりに心配してきたのだろう。

質問の意味を理解し、ふふと笑みを零したを、銀は怪訝そうな顔で見つめた。

は、ふわりと銀の方へ顔を向けた。




「私は本当に何も無いんだよ。気分だっただけだし。銀は?」


「私ですか?」


「そうだよ。銀はどうして、ここに来たの?」






「今日は様の生誕日と聞きました」





銀は嬉しそうに微笑んでそう答えた。

は一瞬、何を言っているのか分からなかったが、少しずつ分かってくると顔をほんのり赤くした。

頬に手の甲を当て、必死に熱を取ろうとする。

そんな様子を知ってか知らずか、銀は言の葉を紡ぎ続ける。




「今日は泰衡様のお申し付けなどがあり、様にお会いできなかったので・・・・このような時間になってしまいました」



「い、忙しかったんだね」



「ですが、様がお生まれにならなければ、私は様と会い、この様な想いを知らずに生きていたと思うのです」



「・・・・・そう(私顔赤いよね!?絶対)」



様にどうしても、お礼を言いたくて・・・・参りました」




「お礼?」



銀の一言に思わず首をかしげた。

誕生日に"おめでとう"を言うのは、あちらでは一般的だし、もそうだと思っていた。

だが・・・・・


「何でお礼言うの?私に」



「可笑しいですか?」



「可笑しいって言うか・・・・・普通、おめでとう!って言うから」



「そうなのですか。ふふ、でも私は様にお礼を言わなくてはなりません」



「どうして・・・?」




がそう呟くと、聞こえたのか、銀が笑みを深くした。

頬に手を沿え、しっかりと顔を見て、銀が言の葉を、最も伝えたい想いを言の葉に乗せる。








様、生まれてきてくださって、ありがとうございます。

 私と出会い、私を愛してくださって、ありがとうございます。


 これからも、私が愛することを、許してくださいますか?」





「っ、そう、いうの・・・・・・」



「ふふ、顔を真っ赤にされて、どうされましたか?」


「分かっててそういうこと言う!」


「申し訳ありません。ですが、様が余りにも可愛らしいので」



「可愛いとか・・・・・!」



様」





銀に呼ばれ、からかわれた様に感じるは少し不機嫌みたいだ。

そんな様子さえ、愛しいと言わんばかりに、片手を顎へ滑らせ、口付ける。

銀からの、優しく甘い口付けに、怒りなど、自分の持つ感情や自分自身、全てが包み込まれていくように感じた。

長いようで、短い口付けが終わり、鼻が擦れる距離で、見つめ合う。

顔が熱い。

自分の顔は、さっきよりも赤い。と確信を持ちながらも、隠そうとはしなかった。






「お慕い申し上げております、様」







風が二人の影を、声を、消していくのを、涼しいとは、寒いとは思わなかった。





















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花鋳ちとせ殿へ、贈り物。
遅くなりましたが、ハピバ☆
これからもよろしくお願いします(ぺこり)


2008.09.05