想いとは、きっともっと華やかな、明るいものなのだろう。
神子を見ていると、そう思える。
だが、殿を見ていると、そうは思えない自分がいる。
「だから、熊野に来いって」
「何度も何度も・・・・本当に飽きないね」
「飽きる?オレが?お前に飽きなんて来るはず無いだろう?」
殿の肩を抱き、耳元で囁くヒノエ。
呆れつつも、楽しそうな顔の殿。
羨ましい。
それと同時に湧き上がってくるは、黒い何か。
私はその存在を、知っている。
認識している、それは、殿には決して見せてはいけないものだ。
分かっている。
分かっているのだけれど・・・・・本能が拒絶する。
ヒノエに対して。
殿に対して。
ヒノエだけでない。
弁慶殿や景時殿、先生。
誰に対しても、この黒いものは敵意を、悪意を向ける。
「敦盛?」
あぁ、どうしたらいいのだ。
全て・・・・・
「・・・・殿」
あなたがいけないのだ。
新緑は僕に優しくない
―――――――――
維鈴柚架殿に捧げます。季節外れの合格祝いです。