今日は一段と冷えるなと思っていたら、案の定雪が降っていた。


寒いが、一面の白い世界というのは美しく、僕は町へと出ていた。





「これ程積もると、まるで違う世界に来たみたいですね・・・」


「本当に」


さん、どうしてここに・・・」


「それはこっちの台詞ですよ、弁慶殿。私は一人優雅に散歩していただけです」


「こんなに朝早くからですか?」


「誰よりも早く足跡を付けたかったんです」






何とも可愛らしい理由だ。



確かに彼女が歩いてきたであろう道を見てみると、一人分の足跡しか無かった。



今はもう雪は降っていない。



青い空に白い地面。


そこに在るのは僕にさんに、二人分の足跡。





誰も居ないその空間に、僕らだけの息遣いが聞こえていた。















無音の世界





















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花鋳ちとせ様へ、寒中見舞い。


2007.02.03